まずは、長々とお読みいただき、ありがとうございました。
どうしてもJくんの過去捏造と、それにまつわるお話を書きたいとずっと思っていて、これが私の作り上げたひとつの形です。
他にもいくつかパターンがあるのですが、それはオフィシャル設定を知らなかった頃の話なので、もっとぶっ飛んでいます。まあ、形になるかどうかは神さましだいということで……。
と、それはどうでもいいのです。このお話についてです。
彼の出身国というか、生まれた国がオフィシャル設定でソマリアと聞いて、じわじわあたためていたネタでした。
いまだに内乱が終わらず、渡航禁止区域に指定された国。
子供の権利条約を批准していない、世界で唯一の国。
ベトナムにもアフガンにもイラクにも手出しをしたアメリカが、さじを投げて撤退した国――。
そこから外に出て、世界有数の金持ち国である日本人の手元に渡ったJくんは、はっきり言ってものすごい幸運の持ち主だったと思います。それで思ったのです。もしもJくんがあの国の外に出られなかったら、どういう道を歩んでいたのか、と。
その鏡の人生のひとつのようなものを絡めた話が湧いてきたので、オリキャラの存在を借りて書いてみました。
人身売買と少年兵としての戦闘。身寄りのない子供たちにとって、これはさして珍しくもない行く末なのだろうと愚考したのです。
実際のところ、現実世界において人身売買の全容は明らかになどなっていませんし、表にその情報もほとんど出てきていません。少年兵として扱われる子供たちだって、戦闘訓練はろくに受けず、文字通り『人間の盾』として使われることがほとんどのようです。
私の書いた話は、思いっきり現実離れをしたフィクション、もっと言えばファンタジーに近いものです。それでも、根底では現実の話を少しは踏まえてみました。
それと、実はこのお話はサイトを立ち上げるきっかけになったものでもあります。
ある日唐突にこの話の構想が降ってきて、いろいろと考えて、プロットを立てて。どうしても、書いたものをどなたかに読んでいただきたくなったんです。
サイト名は、一番はじめに思いついた場面の中のひとつである、本編中では書ききれなかったヘリポートでのラストシーンからとってきています。
タイトルの『月光虹』は、別名を白虹やら月虹やらといい、読んで字のごとく、月に架かる虹のことを示します。
ただでさえ出現率のあまり高くない虹が、月に架かるのは更に珍しい事象です。よって、土地によってそれは吉事の兆候としたり凶事の兆候としたりするそうです。また、虹には世界中で言い伝えがあり、共通するもののひとつが『虹の麓は夢の叶う場所・届かない場所』というものです。有名ですよね。
月光虹の出現には厳しい条件があり、満月の夜、ちょっとだけ雨が降って、すぐに晴れることなんだそうです。そんな幻想的で奇跡的な夜を私なりに表現して、補遺とサイト名は『月が泪をこぼす夜』。タイトルの方は捻りもなにもなく、そのまま『月光虹』と。
はじめ、民話的な意味(吉事・凶事の前兆)というのを知らない頃の月光虹へのイメージが、ありえないもの・届かない夢、というものだったんです。そこにオリキャラへのイメージをもってつけたタイトルでした。
彼の抱く夢と約束の象徴、というコンセプトで。
書く上で全体的に気をつけていたのは、決してJくんとロルに、お互いの名前を呼ばせないこと。
マイ設定バリバリで申し訳ないのですが、私としては、二人には両親から貰った別の名前があると考えています。ただ、そんなものを尊重する気のない周りがつけたもうひとつの呼び名を使って生きているだけで、彼らの中に、それは褪せない記憶として存在すると思うのです。だから、彼らは偽物の名前で互いを呼ばないし、本物の名前をあっさり明かすことには抵抗を持つ。
そう考えると、どうしても呼ばせるわけにはいかないし、(ロルはともかく、Jくんは特に)まさかオリジナル設定のそんな名前を使って話を進めるわけには、さすがに行かないので、頑張って伏せて歩きました。
何箇所か、文字にせず呼んでいるところもありますけれども、そこは気にせずあっさり読み飛ばしていただけていれば、狙い通りな感じで嬉しいのですが、どうでしょう。自然にできていたでしょうか。
本編ラストのあたりで、オリキャラのロルがどうなったかはぼかしてありますが、どうぞ、お好きなように解釈してやってください。
私の中でそれなりの形をもって終わってはいるのですが、それはあまりあそこでは明示したくなかったのです。
そこを書きたくてはじめたはずが、書き上げてみたらなんだかおまけみたいになってしまって(苦笑)。
でも、私の選んだエンディングをお読みいただける方は、どうぞ、終章のラストにあるリンクをクリックしてみてください。
前のサイトではちょっとした隠しにしてあったのですが、オープンにしてみました。
ラストで飛ばしてある場面の補完にもなるものです。幾通りにも分岐しているだろう未来の中の、ひとつの可能性として。
ありがちなネタといえばそれまででしたし、テーマと舞台が大きかった分、力不足ゆえの構成の悪さも目につきます(…)。ある意味、夢小説にも近いほどのオリジナル度でした。
それでも、執筆当時の私にできる全力を傾けた一作でもありました。なので、もしもお気に召していただけた方がお一人でもいらっしゃればこの上なく幸いです。
本編だけではちょっと判りづらい自覚もあるのと、貧乏性なのとで、オリキャラの設定やら各章・各話のタイトルなどの説明ページへリンクを貼りました。
ご自分のイメージを大切になさる方にはあまりお奨めできませんが、私の含みの解説になっていると思いますので、気になる方は一読してみてください。あまり説明的になり過ぎないように、と思って書き進めていたので、わけがわからなくてもあえてスルーしている部分とかの補完になれば、と思っています。
後書きのくせにこんなに長々となってしまいましたが、お読みいただき、本当にありがとうございました。
章ごとのタイトルと、そのときのタイトルバーに表示されていた言葉についての解説。
第一章の各話のタイトルと、そのときのタイトルバーに表示されていた言葉についての解説。
第二章の各話のタイトルと、そのときのタイトルバーに表示されていた言葉についての解説。
第三章の各話のタイトルと、そのときのタイトルバーに表示されていた言葉についての解説。
第四章の各話のタイトルと、そのときのタイトルバーに表示されていた言葉についての解説。
主要なオリキャラの設定資料。
特にロルやルーカスについては、話の中では省きに省いた設定を。
他、一回した名前が出てきていない人とか、名前すら出てこなかった人とかでも、設定がある人のは載せました。